
「歯磨きは一日3回3分間」と言われたりもしますが、それって本当?もっと何回も、長く磨いたほうが良いのでは?食後すぐ磨いたほうがいいいとか、少したってからの方がいいとか、歯磨きの時間とタイミング、何が正解なんでしょう?
歯磨き時間に必要な時間の目安や行うタイミングなど、サンスター附属千里歯科診療所の歯科衛生士・茨木浩子さんに聞いてみました。

監修/茨木浩子(いばらき ひろこ)歯科衛生士
- 2009年
- 一般財団法人サンスター財団へ入社
- 2011年
- 日本歯科審美学会 ホワイトニングコーディネーター 取得
- 2017年
- 日本咀嚼学会 健康咀嚼指導士 取得
- 2018年
- 大阪府糖尿病協会 大阪糖尿病療養指導士 取得
日本歯科審美学会 認定士 取得 - 2019年
- 日本臨床歯周病学会 認定歯科衛生士 取得
日本小児歯科学会 認定歯科衛生士 取得
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歯磨きにどれくらいの時間をかける?
みなさんは、一回の歯磨きにどれぐらいの時間をかけているでしょうか。丁寧な歯磨きは「一回3分間」とよく言われますが、3分間の歯磨きは、計ってみると意外と長いことがわかります。
日本人の平均歯磨き回数と時間

厚生労働省が実施している歯科疾患実態調査によると、歯磨きの平均回数で一番多いのは、一日2回という回答です。所要時間で多いのは「一回1~3分未満」だというデータもあり「一日3回3分間」には、少し届かない人も多いようです。ライフスタイルによっては、歯磨きにゆっくり時間を取れない方もいるかもしれません。
理想的な歯磨きの回数や所要時間は、どれぐらいなのでしょうか。
必要な時間は最低3分

一般的には、毎食後3分間の歯磨きが推奨されています。
28本(親知らずをいれると32本)の歯の汚れをしっかり落とすために、丁寧に磨くとなると3分間ほどかかるためです。
茨木さんは「一日のうち1回か2回しか磨かないのがダメかというと、必ずしもそうではありません」と話します。
ライフスタイルによっては、毎食後3分間磨くことが難しい場合もあります。1日のうち1回しか歯磨きできないという場合でも、その1回にしっかり時間をかけて歯磨きができれば、すぐに虫歯や歯周病になる可能性は低いと考えられるのです。
時間よりもしっかりと磨けているかが重要

歯磨きで大切なことは、汚れを残さない磨き方ができているかどうかです。
一日3回歯磨きができない場合も、寝る前の歯磨きはしっかり行いたいもの。
睡眠中は口の中が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすい環境になります。日中に活動している交感神経から、睡眠中はリラックスモードの副交感神経へ活動が切り替わり、唾液の分泌量が減少してお口の中が乾燥します。口呼吸で寝ている方はさらに乾燥しやすい状況です。そうした乾燥した口の中は、適度な湿度と温度で、虫歯菌や歯周病菌が活動しやすい環境が整ってしまいます。
だからこそ、夜の歯磨きは丁寧に行い、虫歯菌や歯周病菌を減らして、虫歯・歯周病を予防しましょう。
歯磨きの後はフロスなどの歯間清掃用具でケア

時間をかけて丁寧に磨いたとしても、歯と歯の間の汚れは、歯ブラシだけでは取れにくいものです。
そこで使いたいのが歯間清掃用具。最近はホームケアでも、歯磨きのあとにデンタルフロスや歯間ブラシを使う人が増えてきました。
デンタルフロスは、歯の側面に沿ってのこぎりのように動かして使います。歯間ブラシは歯と歯の間をブラッシングして汚れを取ります。
「歯と歯茎の境目へデンタルフロスを入れて使います。歯と歯の間のすきまが大きい場合は、歯間ブラシを使うといいでしょう」
歯磨きの理想のタイミング 食後すぐに磨くのはNG?

食後の歯磨きは、食後のどのタイミングで歯磨きすればよいでしょうか?食べ終わってすぐにする人も多いといわれますが「30分ほど時間を空けてから歯磨きするのがいい」という話も耳にすることがあります。本当のところはどうなんでしょうか?
食後にすぐ歯を磨いちゃいけないって本当?
「結論から言うと、食後すぐに歯を磨くことを推奨します」と茨木さん。
歯に付着したままの食べかすは、虫歯菌が糖を分解して酸を作り、歯を溶かし始めるからです。それではなぜ「食後は少し時間を空けて、歯磨きを」という話があるのでしょうか。
「酸性に傾いた食事をすると、口の中も酸性になります。それをもとに戻そうとするのが唾液です。酸は歯を溶かす働きがあるので、唾液の作用で中性に戻る前の酸性の状態で歯磨きをすると歯を傷める、という考えからでしょう」(茨木さん)
よほど酸性に傾いた食事内容でなければ、食後すぐに歯磨きするのがいいでしょう。酸性に傾いた状態で歯磨きをしても、歯を溶かすほど強く歯磨きをすることは少なく、それよりは、歯に付着した食べカスを早めに除去するほうが良さそうです。
お口の中に残っている食べかすは、虫歯菌が糖を分解して酸を作り、歯を溶かします。歯を守るために、まずは食べカスを取り除くことが大切。食後すぐのほうが、汚れも落としやすいのです。歯垢は、虫歯の進行を早めたり、歯周病にも影響しますので、お口の中を清潔な状態に保つよう、食べたらあとには丁寧に歯磨きを行いましょう。
歯磨きの時間が長過ぎるのは悪影響?

「一日3回3分間」と言われる歯磨きですが、長い時間をかければかけるほど、良いのでしょうか。長すぎる歯磨きで悪い影響が出ることがあるのでしょうか。
磨きすぎは歯を傷めることも
極端に長い時間行う歯磨きは、歯や歯茎を傷つけたり、知覚過敏の症状を引き起こす場合があります。知覚過敏は、力を入れすぎる歯磨きや噛み合わせが原因となることもあり、歯のセメント質とエナメル質の境目あたりで症状が表れます。
歯の汚れをしっかり取り除くために必要な歯磨き時間は3分ほど。長ければいいというのではなく、自分のお口の状態に合う歯ブラシ選びと磨き方ができているかどうかが大切です。歯磨きで気をつけるポイントは、お口の状態によって異なりますので、歯科医に相談してみましょう。
子供の歯磨きにも注意
子供の歯磨きで気を付けることは2つ。ゴシゴシと力を入れて磨かないことと、虫歯になりやすいポイントを丁寧に磨くことです。
親が仕上げ磨きをする場合は、寝かせ磨きをするといいでしょう。力を入れて磨くと歯茎を傷つけたり、子供が痛がれば歯磨きを嫌がるようになるので、虫歯になりやすいポイントを中心に小刻みに優しく歯ブラシを動かします。
虫歯になりやすいポイントは、奥歯の歯と歯の間や噛み合わせの溝、上の前歯の歯と歯の間です。
子供の歯は少しずつ生えてくるので、月齢や生え方に合わせた磨き方を、歯科医に相談してみるといいでしょう。
歯茎にも影響が
時間のかけすぎだけが問題ではありませんが、過度な歯磨きは、歯肉退縮、くさび状欠損、フェストゥーンなど歯茎に影響することがあります。
適切でないブラッシングや噛む力が強い人などは、歯肉が下がり、知覚過敏の症状が出ることも。くさび状に摩耗して象牙質が出てしまった状態がくさび状欠損です。フェストゥーンは、歯茎の縁が盛り上がる症状です。間違ったブラッシングや力の入れすぎで症状が出るので、適切なブラッシングを行えば元の状態に戻せます。
正しい磨き方はプロに聞いてみる

「磨く」と「磨けている」は違います。時間をかければいいものではなく、力を入れすぎても、歯と歯茎を傷めることにもつながるのです。歯並びや歯と歯茎の状態によって、一人ひとり適切な歯磨きの方法が異なります。自分に合う磨き方や歯ブラシなどの道具の選び方を、専門家に教えてもらうといいでしょう。
まとめ
歯磨きの目的は、虫歯や歯周病などを予防すること。自分に合う歯ブラシで適切な歯磨きを行うことが、虫歯や歯周病の予防につながるのです。
歯の健康のために行う歯磨きも、やり方が合わなければ歯や歯茎を傷めてしまう原因にもなります。
適切な歯磨きを行うことで、お口の中は清潔に保たれます。虫歯や歯周病になってからだけでなく、気軽に歯科医に相談して、口腔環境を整え、いつまでも健康で美しい歯を保ちましょう。
編集者 | サンスター株式会社編集部 |
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