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2019.06.10

【歯科衛生士監修】歯ブラシの洗い方、消毒方法、お手入れについて

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お口の中をきれいにしておくためにも、歯ブラシの選び方やケアは大切です。でも意外に正しい歯ブラシの選び方や消毒、洗浄の仕方など、わからないことがあります。附属千里歯科診療所の歯科衛生士・茨木浩子さんが、歯ブラシのケアの基本から選び方までわかりやすく解説してくれました。歯や歯茎を健康に保つことは、体の健康にもつながります。

監修/茨木浩子(いばらき ひろこ)歯科衛生士

2009年
一般財団法人サンスター財団へ入社
2011年
日本歯科審美学会 ホワイトニングコーディネーター 取得
2017年
日本咀嚼学会 健康咀嚼指導士 取得
2018年
大阪府糖尿病協会 大阪糖尿病療養指導士 取得
日本歯科審美学会 認定士 取得
2019年
日本臨床歯周病学会 認定歯科衛生士 取得
日本小児歯科学会 認定歯科衛生士 取得

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今お使いの歯ブラシ、どんな状態ですか?

みなさんがいま使っている歯ブラシは、どんな状態でしょう? 使い始めてからどれぐらい経っていますか?

ゴシゴシと無理に力を入れなければ長持ちするような気がしますが、どのくらい使ったら交換すべきものなのでしょうか?

歯ブラシ交換のチェックポイントと交換時期の目安

今使っている歯ブラシ。交換したほうがいいかどうか、簡単にチェックするポイントについて説明します。

チェックポイント1「毛先の広がり」

「歯ブラシのブラシ部分の毛先が広がると、清掃性が下がります。ブラシ部分は毛の弾力と毛先が当たることによって、歯の汚れを掃除しているからです。毛先が広がっていると、毛の弾力が失われて歯に毛先部分が当たっていない状態になり、しっかり磨いているようでも、磨き残しが出てしまうのです。『磨いている』と『磨けている』は、違うんですね。」

チェックポイント2「植毛部分の汚れ」

「歯ブラシの植毛部分は毛が密集しているので、どうしても汚れが残りやすいんです。流水でしっかり洗っていても、落ちない汚れが気になるようになったら、取り替えたいですね。また見た目に汚れが気にならなくても、汚れが残ってしまっていることも多い。汚れや毛に付着した菌を口の中へ入れてしまうリスクを抑えるためにも、定期的に取り替えることをおすすめします。」

見た目はOKでも、1か月たったら取替えたい

「歯ブラシをずっと使っていても、毛先も広がらないし汚れも気にならない、という方がいらっしゃるかもしれません。 けれど歯科医では、使い始めて1ヶ月を目安に、新しい歯ブラシに取り替えることを推奨しています。

歯ブラシはお口の中へ入れるものなので、清潔な状態を保つことが大切です。歯ブラシのお手入れは水で洗って乾かしているだけのものですから、遅くても1ヶ月に1本のペースで交換することをおすすめしています。」

「ただ、1ヶ月を目安にというのは、毎日適切に歯磨きをしている方の場合です。出血が多いとか歯の汚れがたまっている方の場合は、(歯ブラシに付着する汚れや菌が多い可能性があるので)もう少し短い期間で交換してもいいでしょう」

「だからといって、1ヶ月を過ぎた歯ブラシを口の中に入れるのが絶対ダメ、というわけではありません。歯磨きでは、磨いたあとに口をすすぎますし、使ったあとの歯ブラシもすすぐので、過度に心配しなくても大丈夫です。」

電動歯ブラシのヘッド部分の交換タイミングは?

最近では、電動歯ブラシを使っているという人も増えてきたようです。電動歯ブラシの場合の交換タイミングはどうなのでしょう。

2~3ヶ月を目安にしているものが多い

「ヘッドのブラシ部分の交換の目安は、メーカーやモデルによっても異なります。2~3ヶ月を目安にしているものが多いようですが、汚れやブラシの広がり具合によって交換を考えてもいいかもしれませんね。」 「電動歯ブラシの本体については、それぞれのメーカーの取り扱い説明書に従って扱いましょう。」

歯ブラシの正しいお手入れ方法は?

歯磨き後の、歯ブラシのお手入れ。なんとなくやっている人も多いのでは?歯ブラシについた汚れは見えるけど、見えない菌はどのくらい付着しているもの? どれぐらい汚れるものなのでしょう。

歯ブラシにつくばい菌ってどのくらい?

お口の中は、適度な温度と湿度と、食べカスなどの栄養もあり、菌にとっては居心地の良い環境です。
特にプラーク(歯垢)は1mgに10億もの菌が住み着いているとも言われています。

歯や歯茎のトラブルの元、歯周病菌、う蝕(ムシ歯)関連菌以外にも、肺炎球菌・黄色ブドウ球菌・緑膿菌などの肺炎関連菌や、カビの一種の真菌などがいることもあります。菌のすべてがカラダに悪い、体調に悪影響を与えるものではなかったとしても、口の中にはかなりの菌が存在しているといえます。(クラブサンスター「お家の雑菌が気になるあなた。お口の菌も気にしませんか?」)

「歯ブラシに『どれぐらいの菌がつくんだろう』 と気になる方もいらっしゃるでしょうが、歯ブラシに付着した菌数の調査データがあるわけではないんです。なぜなら歯科においては、歯ブラシはディスポーザブル、使い捨てるものと考えられているからです。新しい歯ブラシも一度口に入れたら、その時点で当然菌が付着します。」
「大切なことは、歯ブラシは使ったら流水をかけてしっかり洗って、しっかり乾燥させておくことと、丁寧な歯磨きをして口の中をキレイにしておくことです」

「流水をかける場合も指でゴシゴシするのでなく、いろんな角度から水を当てて汚れを落とします。そのあとに、水を入れたコップの中に歯ブラシを入れてシャカシャカとゆすぎ、その後、流水下での洗浄を行う方法もいいですね」

歯ブラシが汚れたままだと、、、

「汚れが残ったままの歯ブラシは、菌が繁殖しやすい環境になっています。次に歯磨きをするときに、繁殖した菌を口の中へ入れてしまうこともゼロではありません。それが原因で、すぐに虫歯や歯周病になるものでもありませんが、体調を崩しているときなどに、歯茎が腫れてしまうきっかけにつながることも考えられます。使ったあとの歯ブラシを清潔にしておくこと、1ヶ月を目安に交換していくことは、虫歯や歯周病予防のために大切です」

歯ブラシの正しい消毒方法ってある?

歯ブラシは、使い捨てのもの。けれど、使うたびに捨てるというわけにはいきません。そこで、しっかりと流水で洗って乾かしておくことが大切です。さらに、もう一歩踏み込んで、歯ブラシを消毒する方法はあるのでしょうか?

赤ちゃん歯ブラシ、哺乳瓶と一緒に消毒すればいい?

「歯が生え始めた赤ちゃんが使う歯ブラシなど、哺乳瓶と一緒に消毒ができそうだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ただ、哺乳瓶や食器を消毒するためのものは、それ専用のものと考えるほうがいいでしょう。同じプラスチック製品でも歯ブラシはブラシ部分の先が細く、根元は毛が密集しているので、流水を20秒ほどかけて汚れを落とし、しっかり乾燥させておくことの方が良いかもしれません。」

熱湯消毒や電子レンジ、熱による消毒は?

「熱湯をかけての消毒も同じです。むしろ細い毛の部分もプラスチック製品なので、(変形、変質などを避けるためにも)熱湯はかけないほうがいいでしょう」
「歯ブラシを電子レンジで消毒したら効果があるか、という声もあるようですが、これも熱による消毒方法なので同じです。」

食器用の漂白剤で消毒は?

「食器用の漂白剤で殺菌したい、と思われる方もいらっしゃいますが、完全に菌をいなくさせる程の効果はないというエビデンスがあるので、漂白剤での消毒は意味がありません。
歯ブラシは毛が密集したプラスチック製品ですので、滅菌消毒には不向きだというのが医療的な考え方です」

参考:日本石鹸洗剤工業会「どこがどう違うのか…「滅菌」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語

保育園や介護施設での歯ブラシ管理で気をつけたいこと

「保育園や介護施設での歯ブラシの管理は、家庭での管理より少し気を配ったほうがいいですね。多くの人が利用する場所ですので、それぞれの歯ブラシが、他の人の歯ブラシ触れないように保管するようにしましょう。流水をかけて洗い、乾燥させるというのは同じです。洗った後、等間隔に歯ブラシを立てて保管できるといいのですが、スペースの問題もありますので、歯ブラシ用のキャップをつけて保管します。水気をしっかり切ってからキャップをしておけば大丈夫でしょう」

やはり、しっかりと汚れを水で洗い流し、乾燥させ、定期的に交換するというのが、一番良いようです。

あなたの歯ブラシ選びどうしてますか?正しい歯ブラシの選び方

1ヶ月たって、あるいは今の歯ブラシを見直して、新しい歯ブラシに買い替えようという時のために、歯ブラシの選び方についても知っておきましょう。歯ブラシの正しい選び方を知ると、歯磨きの質も向上します。

サイズはあってますか?

「歯磨きは歯ブラシという『道具』と、磨くという『テクニック』の組み合わせです。歯ブラシは、歯の大きさの平均をもとに作られていて(日本人の男性の前歯の平均は8~9ミリ、女性は7~8ミリ)、歯の大きさも目安の一つですが、磨き方や歯や口の中のサイズによっても、ちょうどいいサイズは人それぞれ。

大きな歯ブラシを使えば、汚れをとりやすいでしょうが、磨き方や歯並びによっては磨き残しも増えてしまいます。コンパクトな歯ブラシで、縦にしたり横にしたりしながら磨くのがいいでしょう。

口の中の空間が狭い人や、口に対して舌が大きい人も、大きな歯ブラシではしっかり磨けないことがありますので、奥の歯や下の歯の側面もしっかり磨けるサイズを選びましょう」

やわらかめ、ふつう、かため、どう違う?

「歯磨きは、1本の歯ブラシで行う方が多いと思います。その場合は、かたい歯ブラシよりもふつうの柔らかさを選ぶのがいいでしょう。かたい歯ブラシは、しなりが少ないので大きな汚れを落としやすいのですが、歯と歯茎の境目などは磨き残しがあるかもしれません。また、歯の根の部分は表面部と違いやわらかいので、適切な力で磨いたとしても、歯が削れて沁みてしまうこともあります。

ただ、握力の弱い高齢の方が歯磨きをする場合は、清掃性の高いかための歯ブラシを利用することもあります。その場合も、完璧に磨くという前提で、かたい歯ブラシでサッと汚れを落としたあとに、柔らかい歯ブラシで歯と歯茎の境目を磨くという使い分けが必要です」

子供用歯ブラシは月齢で選べばいい?

「子供用の歯ブラシは、成長や口の中の様子に合わせて選びます。子供用の歯ブラシは、事故防止のために柄の長さが短めです。特によちよち歩きの子に歯ブラシを持たせたまま目を離すのは危険なので、座らせてから持たせ、前に倒れないようフォローし、見守ってください。歯ブラシを自分で口に入れて行き来させることが習慣になるように、柄の短いタイプのものからスタートしましょう」

仕上げ磨きの歯ブラシはどう選ぶ?

「子供の歯磨きでは、仕上げ磨きが必要です。お父さん、お母さんが歯ブラシを持ったときに子どもの奥歯に届くもの、歯ブラシのヘッド部分が小さいものを選びましょう。

大人に比べて、子供の歯垢は粘着力が高いんです。子供用の歯ブラシは、毛先の柔らかいものは少なく、歯垢を落とすのに向いている歯ブラシが販売されていると思いますよ」

まとめ

大切な歯と歯茎の健康のために、歯ブラシを定期的に交換すること、自分に合う歯ブラシを選ぶことは大切です。自分の歯やお口の中の状態、歯の磨き方のクセなどを、普段から歯医者でチェックしてもらっていると安心です。虫歯や歯周病の予防にもなり、結果的に歯科医に行く回数を減らすことにもつながります。

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