ORAL
2019.03.25

【歯科衛生士監修】子供の虫歯予防と治療 知っておきたい子供の歯のこと

関連キーワード:

赤ちゃんのお口の中に歯が生えてきたら、虫歯にならないよう気をつけたいもの。虫歯予防のために親は、どんなことをしたらいいでしょうか。虫歯予防のためのための習慣、治療の話、子供の歯の特徴など、サンスター附属千里歯科診療所の歯科衛生士・茨木浩子さんに教えてもらいます。

子供の虫歯予防や治療に関して情報があふれるなか、本当に気をつけたいこと、おうちでできることを知っておきましょう。

監修/茨木浩子(いばらき ひろこ)歯科衛生士

2009年
一般財団法人サンスター財団へ入社
2011年
日本歯科審美学会 ホワイトニングコーディネーター 取得
2017年
日本咀嚼学会 健康咀嚼指導士 取得
2018年
大阪府糖尿病協会 大阪糖尿病療養指導士 取得
日本歯科審美学会 認定士 取得
2019年
日本臨床歯周病学会 認定歯科衛生士 取得
日本小児歯科学会 認定歯科衛生士 取得

そもそも虫歯菌はいつ子供の口の中に登場する?

子どもの虫歯菌は母子感染します。離乳食が完了して普通の食事に移るころ、1歳半から2歳半ごろには感染していると考えられます。

実はこの時期は子どもの世話に手が取られるため、親自身が歯科医を受診する機会が減り、口腔内の環境が良くない場合が多いのです。

母子手帳で、妊娠中の歯科医受診が推奨されているのは、妊娠中にホルモンバランスが崩れることで虫歯や歯周病の発生など口腔環境が悪くなることを予防するためですが、出産後はなかなか歯科医を受診する時間が取れないこともあげられるかもしれません。

そうした状態で、この時期は親子も密着した生活をしていたりします。例えばお味噌汁をふうふうと冷まして、離乳食として与えたりするだけでも、感染すると考えられています。

ある意味虫歯菌は、当たり前に口の中に存在する菌なのだと考えたほうが良いようです。

虫歯になりやすい子供の特徴ってある?

誰の口の中にも虫歯菌が存在しているとして、虫歯になる子とそうでない子の違いはどこになるのでしょうか?

まず、虫歯になりいやすい子供に見られる傾向としては、

  • 不規則な生活習慣(食事時間が不規則、だらだらと食べるなど)
  • 砂糖の摂取回数が多い
  • 歯磨き習慣が身についていない
  • 唾液が少ない
  • 親の虫歯が多い
などがあげられます。

ですので離乳食が始まり、歯が生えてきたら、子どもの口腔内環境を整えるよう気をつけてあげましょう。夜の食事のあとはお口の中をきれいにして寝ること、だらだらと食事をしないという習慣づけが大切です。

子供によって卒乳時期はそれぞれですが、歯が生えて来たら、授乳したあとにお口の中をきれいにすることを心がけましょう。離乳食時期も完了していくころには、自然と夜中の授乳もなくなっていくことが多いので、夜の食事のあとは、歯磨きを勧めるなどして、お口の中をきれいにする習慣をつけてあげましょう。

乳歯の虫歯は放置してても大丈夫?

乳歯も、虫歯になったら治療をします。乳歯は柔らかいため、虫歯が早く進みます。また、痛みが出にくいので気付かないうちに悪化することも考えられます。虫歯が進行して抜歯が必要になれば、永久歯の歯並びに影響することも考えられるため、放置せずに治療しましょう。

子供は成長とともにあごが成長し、大人の歯が生えてくるスペースが確保されます。本来の生え変わるタイミングで大人の歯とバトンタッチできるように、早めに治療を行いましょう。

わかりにくい子供の虫歯、見分けるポイントは?

子供の歯は小さく、汚れと虫歯の見極めは実は難しいのです。毎日の歯磨きで子供の口の中に、虫歯を疑う部分があったら、どうしたらいいでしょう。見分けるポイントはあるでしょうか。

穴が空いてる・歯茎がはれている

「私たちでも乳歯が虫歯かどうかを見分けるのは難しい。穴が空いているのは一つ、ポイントです」

歯に穴が空いているように見えたり、歯茎が腫れているように感じたら、小児の歯科医を受診することを推奨します。

虫歯ではなかったとしても、虫歯予防のためにフッ素塗布をしてもらうことも可能です。乳歯や生え立ての永久歯はフッ素の吸収率がいいので、高濃度のフッ素を塗布しておくことで歯を強くすることができます。

茶色、黒色になっている

乳歯の虫歯の場合は、歯の溝が茶色や黒色に着色することは多くあり、色がついているかどうかは、虫歯を疑うポイントです。治療が必要でない場合もありますが、歯科医を受診して判断してもらいましょう。

「歯科医へ行っても子供さんのコンディションによっては、すぐに治療にかかれないこともあります。回数がかかることもあるので、気になることがあれば早めに受診するのがいいですね」

ひどい状態ってどんな感じ

子供の虫歯が進みひどくなると、歯冠部がすべて溶けてしまうなど、多くの歯に穴があいてしまう状態もまれにあります。

「例えば、哺乳瓶でずっとジュースを飲んでいたり、口の中が甘い状態のままだと口腔内の環境は良くないです。虫歯になり、ご飯を食べられなくなれば柔らかいものや丸のみできるものばかりを食べ、悪循環に」

不規則な生活習慣は虫歯の大きな原因になります。

子供が虫歯を痛がる、そんな時親にできること

もし子供の歯に虫歯を発見したら、痛みが出ないうちに治療を始めたいところです。

「普段から、かかりつけ医で定期検診を受けておくようにしましょう。初めて歯科医院へ行くと、子供も親も緊張しますし、痛みがある場合はなおさらです」

歯科医院が怖いところじゃないと安心できるようにしておくことは、普段からできる準備です。 では、急に痛みを訴えてきたときはどうしたらいいでしょう。

痛み止めはどうするか?

一時的に痛みをしのぐため、市販の鎮痛剤を利用することはかまいません。年齢に合わせた服用回数や分量などの注意事項を守って使用しましょう。

ただし、それで虫歯が治るわけではないので、後日、必ず歯科医を受診しましょう。

休日診療の情報はしっかり押さえて

休日診療の場合、小児歯科専門ではない医師が対応することも考えられます。症状によっては痛み止めや化膿止めを処方してくれることもありますが、それで治癒することはないので、改めて歯科医を受診しましょう。虫歯に限らず、子どもの急病やケガのために、休日診療の情報はチェックしておくといいでしょう。

子供の虫歯治療 神経までいっているといわれたら

歯のメカニズムは大人と同じで、子供の虫歯でも神経まで到達してしまうことはあります。
子供は乳歯が小さいため、神経までの距離が短く、少しの虫歯でも早く進行して神経に到達するのです。
大人の歯に影響しないようであれば、神経をとっても問題はないと考えられています。

「大人の歯の神経を取る治療は、花で例えるとドライフラワーにするようなイメージです。神経を取ってしまうと歯は割れやすくなるので、永久歯の虫歯は残せるようなら神経は置いておくよう治療します」

子供の場合は、生え変わる時期まで歯が残れば大丈夫なので、治療で神経を取ることになっても大きな心配はいりません。

子供の虫歯治療 全身麻酔ってどうなの?

子供の虫歯治療で、局所麻酔は大人の歯科治療と同じように行います。
子供の場合、毎日でも通院してもらい「今日はお水だけかけるね」「上手にできたね」など、回数を重ねてコミュニケーションを取り「ちょっとチクッとするよ」と部分麻酔をしていくなど、工夫をする歯科医院もあります。子供は日々成長するので、前回できなかったことができるようになるなど、回数を重ねることで治療がスムーズに進むことがあります。

治療本数が多いなどで、薬を使用し全身麻酔をする歯科医院もあります。全身麻酔となると子供の体への負担や、心配も大きくなりますよね。心配なことは担当医師にきちんと相談するといいでしょう。

乳歯を銀歯にすることの影響は?

乳歯でも銀歯にすることはあり、影響は特にないと考えられています。最近は、詰め物に用いる白いプラスチック材料も性能が向上しているので、多くの場合は白いプラスチックを用いています。
どちらも特に体への影響は、心配はしなくてよいでしょう。

子供の虫歯予防 一番大切なのはやっぱり歯磨き

子供の虫歯予防で大切なのは、歯磨き・規則正しい食生活・フッ素の塗布です。
特に、仕上げ磨きは、子供のうちしかできない虫歯予防。時間をとって丁寧に磨くようにしたいものです。

仕上げ磨きはいつまで?

仕上げ磨きは、小学校低学年までは毎日行うのが理想です。高学年でも週に1回は仕上げ磨きを続けたいものです。永久歯列が完了するまでは、仕上げ磨きを続けることをおすすめします。

低学年のあいだは、ほとんどが虫歯になりやすい乳歯なので、仕上げ磨きは必要です。
中学年は混合歯列期。大きな奥歯と、前歯との間の小さな奥歯が生え変わる時期で、磨きにくいので磨き残しも出やすい時期です。大人の歯の虫歯予防のために、仕上げ磨きを続けましょう。

高学年になると自分で磨く腕も上達しますが、週に1回ほどはチェックしましょう。子供の歯を守るのは親の仕事。できれば小学生のうちは続けたいものです。

歯磨きを楽しい時間に

歯磨きを子供が嫌がるのには、やはり何か原因がありそうです。

「お母さんの磨く力が強いとか、しっかり磨こうと険しい表情で磨いていませんか?自我が芽生え、自分で何でもしたがる時期なので嫌がることも多いです。」

「上唇の裏にヒダがあるのですが、ここは触ると誰でも痛い。お母さんが気付かずに歯ブラシを当ててしまっていることもあるようです。指でちょっと押さえて磨くと、痛くありません」

音楽をかけながら磨いたり、歯医者さんごっこのようにするなど、楽しい雰囲気を作り、子どもの習慣になるよう工夫してみましょう。

子供の健康のためには、歯の健康も重要です

虫歯が進行すると、食べ物を噛むことができず、場合によっては栄養状態に影響が出ることもあります。普段から柔らかいものを中心にした食事では、しっかり噛まずに飲み込むクセがつき、体内への負担も心配です。

子供の虫歯は、健康な成長に影響することがあるので、離乳食が始まったら食事の後、寝る前のお口の中をキレイにする習慣を身につけるようにしましょう。

まとめ

子供も離乳食のころから、お口の中には虫歯菌が潜んでしまいます。深刻な心配はいりませんが、毎日の食生活、歯磨き習慣、そして普段から歯科医院で検診を受けておくことは大切です。

子供にとって「初めての歯医者さん」が虫歯治療ではなく「お口をきれいにしてもらう場所」になるといいですね。

この記事に関連するカテゴリはこちら