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2019.11.25

血糖値の正常値 血糖値スパイクとは?正しい理解で身を守る

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今や国民病と呼ばれるまでに、日本人に浸透している「糖尿病」。糖尿病の要因である血糖値の上昇は、初めは何の症状もなく、無自覚に進行するため、「血糖値が高め」なぐらいでは、あまり深刻に考えない方も多いでしょう。しかし、大きな合併症が起こったときには、後悔しても元には戻れません。長くツラい病気との闘いが始まります。

昨今、日本に存在する糖尿病有病者と糖尿病予備軍はそれぞれ約1000万人いると言われ、明日は我が身と考えても決して大げさではありません。それでは、このような状況下で、糖尿病を防ぎ、健康的な生活を送るために、私たちはどんな対策をすればよいのでしょうか?まず理解すべきは、血糖値のこと。正常なのか異常なのか、または糖尿病予備軍なのか...。今だけではない、大切な家族や自分の未来の幸せのためにも、改めて考えてみましょう。

血糖値を正しく理解しよう

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のこと。濃度が高すぎても低すぎても問題ですが、一体人間の体では、どのように調節されているのでしょうか?

血糖値はなぜ上がる?糖代謝とは?

炭水化物を主に、様々な食材に含まれる糖質は、身体や脳を動かす主要なエネルギー源となります。通常、血糖値が上がるというのは、食事で得た糖質が消化吸収され、血液中にブドウ糖が増えた状態のことを指します。ただし、これは一時的なもので、血液中のブドウ糖は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用によって、速やかに体の細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。そして、このとき、ブドウ糖がエネルギーに変わることで、血糖値も次第に元に戻っていきます。このような仕組みを糖代謝と言い、うまく機能するためには、インスリンの働きが肝になります。インスリンの働きが悪いと、代謝異常が起こり、血糖値にも影響が出てくるというわけです。

食前食後、年代でも変わるもの

食事によって、一時的に血液中に増えたブドウ糖は、代謝によってエネルギーに変わりますから、健康な人でも食前、食後で血糖値は変動します。このため、健康診断では、血糖値が最も低くなる10時間以上絶食した後の空腹時血糖値を測定します。また、厚生労働省が行う「国民健康・栄養調査」によると、40歳以降は段階的に糖尿病が疑われる人の割合が多くなり、高齢者ほど糖尿病のリスクが高くなります。つまり、加齢も1つの要因となりえるかもしれないのです。超高齢化社会を迎えている私たちにとって、定期的な健診は今後ますます重要になることが予測されます。

食後30分、1時間の血糖値の推移は?

血糖値は、糖代謝が正常に行われているかどうかを示す数値であることは分かりましたが、実際に、食後どのように推移するのでしょうか?健康な人の体では、食後約30分~1時間後位までに血糖値がピークになりますが、糖代謝が速やかに行われるため、食後約2時間後には、ほぼ正常値に戻っているのが普通です。もし、食後2時間経ってもなかなか元に戻らない場合は、糖尿病予備軍の可能性もありますので、注意が必要です。

ヘモグロビンA1c 値とは?

血糖値の他に、近年注目されている指標に、ヘモグロビンA1c(HbA1c)があります。これは、ヘモグロビンにブドウ糖が結合したタンパク質の一種。ヘモグロビンの寿命は血液中で約120日間存続するため、それに結合したヘモグロビンA1cも同じ期間、維持されます。つまり、この割合を見れば、過去1~2ヶ月の平均的な血糖コントロールの状態が分かるということ。慢性的に高血糖であるかを判断するのに役立つヘモグロビンA1c値は、糖尿病診断の際に重要なポイントになります。

血糖値の正常値を知っておこう

空腹時血糖値、ヘモグロビンA1c値を知ることは、自分の糖代謝の状況を確認し、高血糖や低血糖、深刻な病気になる可能性はないか...さまざまなリスクに気づくきっかけになります。健診データを有用に使うためにも、基準値をしっかり確認しておきましょう。

厚生労働省、糖尿病学会の基準値とは?

厚生労働省が提示する標準的な健診プログラムでは、血糖値について、日本糖尿病学会の基準値を採用しています。これによると、高血糖で糖尿病型と判定されるのは、空腹時血糖値が126mg/dl以上、HbA1cが6.5%以上。この状態で、今まで医師の診断を受けていないようであれば、すぐに医療機関を受診する必要があります。血糖値やHbA1cが基準値を超えて高いほど、合併症を発症するリスクが高くなります。たとえ、糖尿病治療中であっても油断は禁物。合併症予防のために、治療を中断しないこと、生活習慣の改善に努めることが大切です。
また、空腹時血糖値が110~125、HbA1cが6.0~6.4の場合は、すぐに糖尿病型とは判定されなくても、糖尿病の可能性が否定できない状態。食後の血糖値の推移を調べるブドウ糖負荷試験など、さらなる検査を受けることが勧められます。

糖尿病予防の観点から見た正常値とは?

厚生労働省が提示する血糖値の正常値とは、空腹時血糖値が、99mg/dl以下、HbA1cが5.5以下の状態。空腹時血糖値が100ml/dl以上になると特定保健指導の対象となります。具体的には、空腹時血糖値100~109mg/dl、HbA1c5.6~5.9は、いわゆる正常高値の状態で、それ未満の場合と比べると、糖尿病予備軍になる可能性が高い群。家族の糖尿病歴、肥満、高血圧、脂質異常症、喫煙...などの要因によって、状況が悪化する場合もあります。気になる点があれば、早めに保健センターや医療機関に相談するようにしましょう。

糖尿病や合併症のリスクを高める!?高血糖の症状とは?

災いが降りかかるまでは知らぬふり...。血糖値が基準値よりも高いことが分かっても、痛くも痒くもないので、なかなか実感が沸かない人が多いのが現状です。ですが、そのまま放置したばかりに、後に重度の合併症で苦しんだり、命を縮めてしまう可能性もあります。高血糖の裏にどんな危険が潜んでいるのか、どんな対策を打つべきなのか、考えておきましょう。

高血糖の諸症状

糖尿病とは、高血糖が慢性的に続く状態のこと。自覚症状がなくても、数値に表れているのであれば、糖尿病有病者であることを認識しなければなりません。また、最初は気づかなくても、少しずつ病気の兆候は出てきます。たとえば、疲れやすい、ものが二重に見える、立ちくらみ...といったものから、手先にチクチク痛みを感じたり、逆に寒冷や痛みに鈍感になったりなどの知覚障害などがあります。怖いのは、この兆候を見過ごして、深刻な合併症に至ってしまうこと。

糖尿病になる前に...高血糖の予防法とは?

糖尿病になる要因は、自己免疫疾患や加齢、家族歴など、改善が難しいものもありますが、日本人の場合、肥満や運動不足など、生活習慣が原因となる場合の方が圧倒的に多いと言われています。ですから、高血糖になるのを防ぐには、まず生活習慣の見直しが必要です。具体的な改善策は、アルコール、清涼飲料水、お菓子を摂りすぎない、野菜やきのこ、大豆、海藻を取り入れたバランスのよい食事を心掛ける、適度な運動をするなど。また、喫煙やストレスも血糖値を上昇させる要因となります。日本人は痩せていても糖尿病にかかりやすいといわれていますので、ライフスタイル全般を見て、何か偏りや問題があるようなら、健康のためにも望ましい方向に変えていきましょう。

低血糖による症状とは?

糖尿病患者では、インスリン注射や糖尿病治療薬の服用によって、低血糖の副作用が起こってしまう場合があります。また、まれにですが、乳幼児や高齢者、糖尿病の薬以外の副作用でも低血糖の症状が現れる場合もあります。放っておくと、脳の中枢神経に影響を及ぼし、深刻な状況になってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

低血糖の諸症状

健康な人であれば、空腹時でも血糖値が70mg/dlより低くなることは滅多にありません。血糖値が60mg/dl~70mg/dl未満になると、冷や汗が出る、気持ちが悪くなる、寒気がする、動悸がする、手足が震える、ふらつく、いらつく...などの交感神経症状が出てきます。さらに、血糖値が30mg/dl未満にもなると、異常な行動をとったり、ろれつが回らない、意識がなくなる、けいれんを起こすなど、意識障害に至る可能性もあります。これは中枢神経症状と言って、低血糖を繰り返しているうちに起こりやすくなる症状です。本人が無自覚なまま、急に倒れてしまう場合もありますので、インスリン製剤や糖尿病治療薬を使っている方は、常に副作用による低血糖の可能性を念頭に置き、家族や周りの人の理解も得ておくようにしましょう。

低血糖の対処法とは?

軽度の低血糖で、その兆候を自覚し、正しく対処することが大切と言えます。中枢神経症状が出る前に、交感神経系の前駆症状を見逃さず、調子がおかしいなと感じたら、すぐにブドウ糖やジュース、キャンディなどの糖質を摂るようにしましょう。また、低血糖を防ぐために、不規則な食生活、過剰な運動、アルコールを大量に飲むなどといった習慣はやめましょう。特にインスリン治療を行っている人は、血糖値の自己測定を行うなどして、日頃から自分の血糖コントロールを把握しておくという対策も講じておいた方がよいでしょう。

妊娠糖尿病と言われたら...?

実は、高血糖は妊娠によって引き起こされてしまう場合もあります。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常のこと。これは比較的軽度なものを指し、妊娠前に糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に発見されたとしても重度の糖尿病は含みません。しかし、明らかな糖尿病とは言えないまでも、妊娠中に高血糖状態になると、おなかの中の赤ちゃんにも影響を与えてしまいます。母子ともに健康で安全な出産を行うためには、血糖コントロールを適切に行うことが大切です。

妊娠糖尿病になると、何が心配?

妊娠糖尿病になると、お母さんだけでなく赤ちゃんも高血糖状態になり、様々な合併症が発生するリスクが高くなります。お母さん側で起こりやすくなるのは、妊娠高血圧症候群、網膜症、腎症、羊水過多など...。赤ちゃん側で起こりやすくなるのは、先天奇形、巨大児、低血糖、黄疸、多血症...そして、中には胎児死亡に至ってしまう場合もあります。

治療法はあるの?

妊娠糖尿病と診断されたら、血糖を厳格にコントロールしなければなりません。空腹時血糖値は、70~100mg/dl、食後2時間の血糖値は120mg/dl未満を目標に管理します。治療法としては、妊娠中は運動療法をあまり勧められないため、食事療法から行います。食事療法で効果が見られない場合は、医師の判断でインスリン療法が取り入れられる場合もあります。また、産後、血糖値が正常に戻っても、妊娠糖尿病の既往歴があると、将来的に糖尿病を発症するリスクが高くなると言われています。引き続き経過観察と管理を怠らないようにしましょう。

最近話題の血糖値スパイクとは?

「隠れ糖尿病」という言葉をご存知でしょうか?空腹時血糖値では異常がなくても、実は知らないうちに糖尿病予備軍や糖尿病になってしまっている場合もあります。最近話題の「血糖値スパイク」は、まさにこの隠れ糖尿病と言われている人たちに起こっているかもしれません。一体どんな問題なのでしょうか?

血糖値スパイクって、どんな状態のこと?

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇してしまうこと。食後は誰でも血糖値が上がりますが、上がり方が急激で、食後2時間経っても血糖値が140mg/dl以上ある場合は、注意が必要です。血糖値スパイクは、糖尿病予備軍になるだけでなく、何度も血糖が急上昇することで血管が傷つき、動脈硬化を促進させてしまいます。放置すると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす恐れもありますので、早期発見、早期対策が重要なポイントになります。

どんな対策を取ればいい?

血糖値スパイクを防ぐためには、糖質の吸収を遅くすることが決め手になります。食事では、1日3食をバランスよく、野菜→肉や魚→ごはんやパン、といった順番で食べるようにすると、糖質の消化吸収に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになります。また、食後すぐにウォーキングをするなど、軽く体を動かすと糖の吸収が抑えられるのでおすすめです。ちょっとした心がけでできることですので、特に糖尿病と指摘されていなくても、不安のある方は、対策しておけるといいですね。

定期的な健康診断と、日々のセルフチェックが大切

高血糖の要因は様々。どんなきっかけで、いつ糖尿病と診断されるか分かりません。また、血糖値スパイクのような問題もあるので、健康診断で異常が見つからなくても絶対安心とは言えないのが怖いですよね。定期的な健康診断はもちろんですが、その他に気になる兆候はないか確認しておくことも大切です。

こんな気になる症状があれば、病院へ

下記のチェックリストを確認して、もし当てはまることが多いなら要注意。糖尿病の可能性が高い状態です。
恐ろしい合併症を引き起こす前に、病院を受診して医師に相談しましょう。

血糖が高いと言われたことがある
肥満気味である
高血圧と言われて薬を飲んでいる
糖尿病の親、兄弟・姉妹がいる
40歳以上である
外食が多い
野菜をあまり食べない
あまり運動をしない
車に乗る機会が多い
妊娠時に尿から糖が出たと言われた

まとめ

糖尿病のリスクがぐんと上がる40代はまさに働き盛り。ついつい健康管理を後回しにしてしまうという方も多いのではないでしょうか?しかし、何をするにも健康な体があってこそ。失ってから元に戻すのはとても困難なことです。健康習慣を始めるには早ければ早いほどよく、続ければ続けるほど効果を感じられるはず。血糖値をうまくコントロールしながら、仕事もプライベートも充実した毎日を過ごしましょう。

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